私の最後の夏の思い出
「ゆりちゃん、見覚え…ない?」
不意に問われて、思わず体がこわばる。ゆっくりと首を振ると、そっか、と今度は少し安心したように返事が返って来た。ぼーっとその景色を見ていると、瑞樹くんがあそこ、と言って湖の反対側を指差した。そこには、鳥居があった。多分昔は赤かった鳥居。長年手入れされて来なかったのか、今は半分が崩れかけて、塗料も剥げていた。
「あの鳥居をくぐって行った先に、ゆりちゃんに見せたいものがあるんだ。俺とゆりちゃんの思い出だから。」
そう言って瑞樹くんはまたあの少し寂しそうな笑顔を見せた。私はそれに軽く微笑み返してから、歩き出した。近くで見てみるとその鳥居はとても小さく、瑞樹くんがギリギリ通れるか通れないかぐらいだった。鳥居をくぐって前を向くと、また違う景色が広がっていた。多分台風などでなぎ倒された木々や、その上で育っている新しい芽。道も綺麗に草が刈られているわけではなく、もはや獣道と呼んでいいほど人間の痕跡がなかった。
「ここ、すごいよね。でも大丈夫。道はちゃんと覚えてるから、ゆりちゃん。俺から離れないようにちゃんと着いてきてね。」
そう言うと瑞樹くんはどんどんと先に進んで行った。急いで後をついて行くと、後ろの方でガサッと音がした。でも、立ち止まっている暇はない。瑞樹くんの歩くスピードはすごく早くて、できるだけ早足で歩かないと、その背中を見失ってしまいそうだった。
不意に問われて、思わず体がこわばる。ゆっくりと首を振ると、そっか、と今度は少し安心したように返事が返って来た。ぼーっとその景色を見ていると、瑞樹くんがあそこ、と言って湖の反対側を指差した。そこには、鳥居があった。多分昔は赤かった鳥居。長年手入れされて来なかったのか、今は半分が崩れかけて、塗料も剥げていた。
「あの鳥居をくぐって行った先に、ゆりちゃんに見せたいものがあるんだ。俺とゆりちゃんの思い出だから。」
そう言って瑞樹くんはまたあの少し寂しそうな笑顔を見せた。私はそれに軽く微笑み返してから、歩き出した。近くで見てみるとその鳥居はとても小さく、瑞樹くんがギリギリ通れるか通れないかぐらいだった。鳥居をくぐって前を向くと、また違う景色が広がっていた。多分台風などでなぎ倒された木々や、その上で育っている新しい芽。道も綺麗に草が刈られているわけではなく、もはや獣道と呼んでいいほど人間の痕跡がなかった。
「ここ、すごいよね。でも大丈夫。道はちゃんと覚えてるから、ゆりちゃん。俺から離れないようにちゃんと着いてきてね。」
そう言うと瑞樹くんはどんどんと先に進んで行った。急いで後をついて行くと、後ろの方でガサッと音がした。でも、立ち止まっている暇はない。瑞樹くんの歩くスピードはすごく早くて、できるだけ早足で歩かないと、その背中を見失ってしまいそうだった。