私の最後の夏の思い出
……この家にはいられない。

「お父さん、お母さん、私……私、おばあちゃんの家に行きたい」

そう言うと、二人は顔を見合わせた後静かに、

「それが優里香の決めたことなら、私たちは口を出さないよ。連絡してあげるから、行っておいで」

と言った。早速電話をかけ始めたお父さんの背中をちらっと見た後に、自分の部屋に行くことにした。
自分の部屋に入って静かにドアを閉めて鍵をかけると、どさっと乱暴に自分の身をベッドに投げた。
はあ、とため息が出る。

「なんで私、おばあちゃんの家に行きたいって言ったんだろう……。行きたいっていうか、行かなきゃ、って……」

どれだけ考えても答えが出ない。
まあいっか、どうでも、と早々に考えを切り上げて明日の学校の準備に取り掛かる。
夏休みまで、あと三日。友達には……別に言わなくてもいいか。
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