私の最後の夏の思い出
「これが、私なの……?」

気がつくと、私はもう一人の自分に問いかけていた。それでも、その問いかけに返事が来るわけがない。
それでも私は話しかけ続けて、いつの間にか私たちは会話をしていた。

「私一人が消えても何も変わらない。そうでしょう?」
『うん、そうだね』
「最初からいなければよかった」
『最初からいなければ誰も悲しまない』
「違うよ。存在していた後でも悲しむ人なんていないよ」
『でも、存在しているんだから。残りの時間を生きて?』

気がつくと私ともう一人の私の体は入れ替わっていた。

目に見えない檻にそっと手を伸ばす。
壊そうと力を入れた瞬間に体が何かに引っ張られるかのように動かなくなった。

――クサリ

体に絡まった透明の鎖を自分で解くことなんてできない。
誰かに助けてもらいたい。
でも、私を助けられる人なんて、助けてくれる人なんてこの世には存在しない。

「私はわかってたよ?でも……助けて……お願い、誰か……!」

 でも、この願いは。誰かに届くこともなく暗闇へと消えていくんだろうね。

「さようなら」

私がそう言って目を閉じた瞬間、瞼の向こう側に光り輝くものを見た気がした。
微かな希望を持って目を開こうとした瞬間、急に現実に引き戻された。
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