私の最後の夏の思い出
ハッと目が覚めて周りを見渡す。
いる場所は確かに新幹線の中。
心が落ち着かなくて、寒くもないのになぜか体が震える。
指先で目頭をなぞると、かすかに濡れていた。怖い夢を見て実際に泣くなんて、小学校のとき以来だ。
ハンカチで涙を拭き取ってから、今みた夢についてじっくりと考えてみる。
何が起こっていたのか、私には理解できなかった。
『私』が言っていた言葉も自分自身が言っていた言葉も全く意味がわからなかった。

それに……

「最後の光、なんだったんだろう……。どこかで見たことがあった気がする」

しばらく考えていた脳が、降車駅を知らせる音でパッと考えを打ち切る。

「あ、次だ」

私はそう呟くと、荷物をまとめて、出口の方に向かった。
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