同姓同名のあの人は
1年生・春
春の、4月。
私は真新しい制服に袖を通し、髪を整える。
今日から私は、高校生になる。
「…うん、いい感じ」
スクールバックの中に筆記用具とスケッチブック、スマホが入っているか見てリビングへと向かう。
今日は学校初日なので、始業式とホームルームがあるだけで、お昼前には学校が終わる。
「おはよう。お母さん、お兄ちゃん、…お父さんは?」
「おはよう美結。お父さんはもう仕事に行ったわよ」
リビングに入って左側すぐにあるキッチンから、ヒョコッと顔を出して言うお母さん。
「おはよう。美結も、もう高校生か…」
リビングの真ん中にあるテーブルと椅子、その1つの椅子に座っているお兄ちゃんが感慨深げに言う。
「何よ、ちょっと前までお兄ちゃんも高校生だったくせに」
ちょっと怒りながら私も椅子に座って朝食を食べる。
「そんな事言う奴には、学校に送ってやらないぞ?」
「えー、ごめんなさーい。だから送ってくださいお願いします」
そんな事を言われた私は一旦、ご飯を食べるのを止めて右隣に居るお兄ちゃんの方に向き、自分の両手を合わせてお願いポーズをした。
「…しかたない、待っててやるから早くご飯食べちゃえよ」
「さっすがお兄ちゃん!」
そう言った後、残りのご飯を食べきった。
それを見たお兄ちゃんが立ち上がったので、私も立ち上がる。
「じゃ、母さん行ってくる」
「行ってきます」
私とお兄ちゃんの声が聞こえたのか、キッチンから顔を出すお母さん。
「行ってらっしゃーい」
私とお兄ちゃんはお母さんに見送られ、玄関から外へ出た。
お兄ちゃんがバイクを出しているのを私は見ているだけ。
昔、近づいてちょっとした火傷を負ったので、私は不用意に近づかないのだった。
「行くぞ、美結」
「うん」
お兄ちゃんから、ヘルメットを貰って被りお兄ちゃんの後ろに乗った。
私は火傷をしたが、お兄ちゃんの運転するバイクが好きだ。
そんな事を思っていたら学校に着いたみたい。
「ありがとう、お兄ちゃん」
そう言いながらバイクから降りて、ヘルメットをお兄ちゃんに渡す。
「おう、じゃあな」
ヘルメットを受け取ったお兄ちゃんは直ぐに、バイクを発進させお兄ちゃんがこれから通う大学の方へと行ってしまった。
私もこれからの学校生活の期待を胸に、ワクワクしながら校門を潜った。