黒魔術
はるかはしいなと違って胸が大きい。白いブラウスを盛り上げるその胸を、白いYシャツ姿のコオの胸に押しつけ、細い腕をしっかりとコオの首に巻きつけて、唇を吸っている。
(なによぅ、はるかったら!)
はるかはわなわなと体をふるわせた。今すぐ戸をあけて、となりの部屋へどなりこんでやりたかった。
しいなにはその資格がある。なぜなら、しいなはコオと付き合っているからだ。
夏休みの直前、以前から好意を寄せていたコオに、しいなのほうから告白した。そしたら、実はコオのほうも、前からしいなのことが気になっていて、告白しようかと迷っていたというのだ。だからすんなりとふたりの交際が始まったのだった。
なのに、秋になったばかりの今、目の前でこんなことをされるなんて……。
唇をかみしめ、
(今すぐとび出していって……)
と思う。
でも思うだけで、足は前へ出ていってくれない。
(そんなことをして、コオ君に嫌われたらどうしよう)
そう思うと、足がすくんでしまって、身動きひとつできないのだった。