黒魔術
はるかは言葉を続けた。
「しいななんて、どこがいいの? 胸もないし、ガリガリだし。淋しいでしょ、ギュッとしたとき?」
「……」
「まあ、もっとも、キスもまだなんじゃ、あたしの体と比べてみようもないかな?」
はるかはドキッとした。
夏休み中、いっしょにプールに行った帰り、コオにキスを迫られていた。でもそのときは、突然のことで気持ちの準備ができてなくて、とっさにコオを突きとばすようにして逃げ出してしまったのだった。
あのとき、どうしてもっと勇気を持って受け入れなかったのかと後悔したものだ。
その後会ったとき、コオはぜんぜん気にした様子もなかった。
本当は、今度キスを迫られたら受け入れようと決意していたのだが、「二度め」はまだ来ていない。
「うるさいな。ひとのことは放っておけよ」
「だってぇ……ねぇ、ホントにしいなとまだ続けるの? あいつ、変なうわさ、あるよ。同じ中学に通っていた子が親戚にいてさ、聞いたんだけど、しいなって、なんと魔女なんだって。黒魔術を使うんだって。アハハハハ、おっかしいッ!」