黒魔術
はるかのあざけるような笑い声を聞きながら、しいなはドーンと崖から突き落とされたようなショックを受けていた。
(知られた……。とうとう、コオ君に知られてしまった……)
体からすーっと血の気がひいていく。
九ケ沼の家系には不思議な力を持った女性が生まれることが多い。
たとえば、明日のできごとを見通す力とか。火のないところに火をつける力とか。あるいはまた、人を呪って体調を悪くさせたり、事故に会わせたりする力、というのもある。どの力も、女性にしか備わらない。
しいなの母ははっきりと、
――魔女の家系よ。
と言った。
それらの不思議な力を活かして、ある者は占い師になり、ある者は呪殺を請け負ったりしている。まさしく魔女だ。
しいなにも不思議な力が備わっている。
しかし彼女はその力を使おうとは思わない。母から言いつけられた「魔女の修行」も途中で拒否した。
――ばかね、魔術を使えば、いろんなものが思い通りになるのに。たとえば男だって……。
と母は笑った。