黒魔術
しいなのほほに赤みがさす。コオ君のことがもっともっと好きになっていく。
「えーっ、ほんとぉ? 趣味わるーい。だいたい、あんな子のどこがいいのさ。顔だって大してかわいくないし」
「顔か……。そうだな」
「でしょ? あたしのほうが絶対かわいいって。それに、ちゃんと付き合ってくれたら、キス以上のことだって……うふふふっ」
はるかがコオの気を引こうと、さかんに体をくねらせる。
コオはそんな少女を一べつしただけで、冷たく言い放った。
「確かにしいなはブスだよ。そのブスがさ、おれに執着しているんだよ。おかしくてたまらないよ。その執着しているブスを、さも気があるように見せかけて、もてあそぶんだよ。こんな楽しい遊びはないよ。ネットゲームなんかより、よっぽどおもしろいんだよ。だから邪魔しないでくれよ。いいな、邪魔するんじゃない。それができるんだったら、陰でこっそりと付き合ってやってもいい。わかったか」
あっけにとられるはるかを見くだすコオの顔は、醜くゆがんでいた。むき出しにした赤黒い歯ぐき。脂ぎって光る鼻の頭。ふだんのさわやかさからは想像もできない、他人を侮辱し、見下す、鼻持ちならない人間のクズの顔だった。