黒魔術
(え?)
しいなの表情が凍りつく。
(コオ君、今……なんて言ったの?)
もてあそぶ。
遊び。
コオのざらついた言葉が、こわれた音楽プレーヤーみたいに、頭の中で何度もくり返し再生される。
しいなの視界からいっさいの光が消えた。
開き戸のすきまの向こうにある資料室も、コオやはるかの姿も、なにもかもが消えた。
しいなは突然まっ暗な世界にひとりでとり残されていた。
もてあそぶ。
遊び。
頭の中にコオの言葉がくり返される。
しいなの体から体温が抜けていき、全身がスーッと冷たくなっていく。まるで冷たい川に浮かぶ水死体のように。
しいなはそのまま開き戸の前で凍りついていた。