Deal×Love
「分かった。また大学でな。椿がちゃんとエレベーターに乗り込むまで見てるから行って」

「うん……」


洸君は手すら繋がなかった。

ただ傍に居てくれた。


家に帰り、部屋に入ると目にはいったのは、海さんが贈ってくれたあの鏡台。

前に立つと綺麗なドレスを着た私が映っている。

海さんは綺麗だと言ってくれた。

でもそれはただの社交辞令。

海さんには好きな人がいるから。

それにしてもマスカラは根こそぎ取れて目の回りは真っ黒で、目はあからさまに泣きましたって分かる程パンパンに腫れている。

酷い顔……。




その日の夜、海さんは帰って来なかった。
物音もしなかったし、次の日の朝起きても居ないようだ。
部屋は静寂しかないから。

私は今日も一人で朝食を温めて食べた。
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