Deal×Love
静かなリビングのせいで、携帯の声が漏れて聞こえてくる。

すすり泣いている声。

私は更に固まって動けない。


何で、海さんは電話に出たの?

弥生さんを、諦めたいんじゃないの……?


不安が私の心に勢いよく襲い掛かってきた。

さっきまでの幸せな気持ちが一瞬で消え去った。

視界がグラついて、この場から逃げたくなってきたその時、海さんと目が合った。

私は逸らそうと思ったが、逸らせなかった。

私を真っ直ぐ見ている海さんの瞳が、目が合うとすぐに柔らかくなった気がしたから。

まるで「安心して」と、伝えているかのように。


「悪いけど、もう弥生には靡かない。だって君と俺はお互い結婚した。それに俺は奥さんを愛することに決めたから」


え?
< 273 / 424 >

この作品をシェア

pagetop