Deal×Love
五分後、終業時刻のようで沢山の人がビルから出てきた。

この中に海さんはいるのかな。
人混みの中を私はキョロキョロ目と顔を必死に動かして海さんを探す。


「椿、お待たせ。浴衣着てきたんだね」

そこに心地好いテノールボイス。
ドジな私は探していたのにも関らず見落としていたようで、いつの間にか海さんが隣にいた。


「お、お仕事、お疲れ様です！」

慌てて軽く頭を下げて言葉を掛けた。

「似合ってる、可愛い」

顔を上げると笑顔で言われて、ズキュンと胸にきた。


「行こう」

そしていつものように手を差し出されて手を伸ばそうとしたら、突然海さんが手を引いた。


「あ、ちょっと待って、電話だ」

海さんは引いた手をスーツのポケットに入れて携帯を取り出し、画面をスライドさせた。

「はい、もしもし、神島です」

そう言うとすぐに海さんの目が大きく見開かれた。
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