Deal×Love
Last
海さんの法律上の妻の私だが、会社の前で泣くのはマズい……。


暫く泣き続けたら脳がやっと動いてくれたが、一番に思うのはやっぱり海さんのことで。
こんな時でも海さんの体裁を気にする私。

胸は苦しいし、身体は重いが、私は歩き出した。


カランカランと響く私の下駄の音。

また、浴衣を着ている女の子とすれ違った。

隣には男の子。

きっと花火大会に向かうのだろう。

きっと幸せな気持ちでいっぱいなのだろう。

彼女の顔は溢れんばかりの笑顔だ。

私も、数分前は幸せな気持ちでいっぱいだった。

きっと同じような顔をしていた。

今は下駄の音が更に私を空しさへと誘う。


一人で居たくない……それにもう、あの家には、帰りたくない……。


私は手提げの巾着袋から携帯を取り出すと電話帳からアリサのページを呼び起こす。


『プルルルル……ガチャ。只今電話に出ることが出来ません』
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