あけぞらのつき

「なるほど。だから神隠しと思ったわけですね」



「ミステリーの古典では、参加者全員が犯人ということもあるかも知れないが」

遠野はそう言って、ふふっと笑った。



「その可能性が?」


「皆無だ。この街で起こったことを、遠野家(うち)に半年も隠しておくなんて、できると思うか?」



「ずいぶんな自信だね」


「それだけ信用されている、ということだ。まあ、信用と言っても俺個人ではなく、家の実績だが」



アキの腕の中で、ミサキが微かに身動ぎをした。

小さなシアターに、薄く朝日が差し込んだ。



「わたくしがおそばにいられない間、主様のことをよろしく頼むよ」


アキは少し寂しげに笑って、シアターとともに霧散した。

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