あけぞらのつき
調査
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聞こえてきた雀の鳴き声に、ミサキは薄く目を開けた。
遠野が用意してくれた真新しい布団は、快適ではあったが、どこか居心地の悪さも感じていた。
未だ慣れない、匂いのせいだ。
ミサキは目を瞑ったまま、片手を伸ばし、傍らで眠っているはずの純白の羽毛を探った。
堅い翼の下のふわふわした羽毛に、寝起きの冷たい指先を差し込むのが、毎日の楽しみだ。
白藍は器用に片目だけを開けて主人を確認すると、また目を閉じて、嘴を羽毛に乗せた。
惰性で目を閉じているだけで、夢の気配はとっくに消えている。
目覚まし時計が鳴るより一瞬早く、遠野の大きな手が、スイッチを切った。
「起きているなら顔を洗え。寝癖もきれいに整えろ。全部できたら、飯をやる」
遠野がからかうように言った。
布団の中で、ミサキの腹の虫が鳴いた。
***
やたらと長いテーブルの両端に向かい合って座り、ミサキは不機嫌そうに肘を突いた。
揃いのお仕着せのメイドたちが、慣れた手付きで朝の食卓を整えた。
「何だ?パンは嫌いか?」
遠野が、優雅な仕草でゆで卵を割った。
今日の朝食は、洋風だ。
たくさんの野菜が柔らかく煮込まれた塩味のスープに、焼きたてのパンとゆで卵。その卵は、トロトロとした半熟だ。
遠野はスプーンの背で割った卵から、中身をすくった。
「食べないのか?腹は空いているだろう?」
「しょうゆ」
ミサキが一言だけ呟いた。
「ダメだ。料理にはジュウブン味付けしてある。足すことは許さない。それに」
遠野は傍らに置いた書き付けを手に取った。