あけぞらのつき

「やっぱり、怖いんだろ?」



「……怖いよ。でも確かめたいんだ」


「何のために?ミサキのシアターに、アイツは入れない。それでいいじゃないか」



「そうなんだけどさ。妙にモヤモヤするんだ。まっくらが、現実にもいるような気がして」


「バカな。あれはサルユメと同じ程度のものだって、アキが言ってただろ」



「解ってる。でも、わたしは確かに、小野寺の死体から、まっくらと同じ気配を感じたんだ」



そして……。


ミサキはわざとアンバランスにリボンを結んで、そう言った。


***

その神社は、鬱蒼とした森の中に、ぽつんと置かれていた。


見上げるほどに長く延びた石段は、急で狭い。



年に数回程度、町内会の清掃活動が入る以外は、ほぼ無人に等しいような場所だ。



ミサキは軽やかな足取りで、石段をあがって、その鳥居をくぐった。

ヒトケのない森の中が余程気に入ったのか、口元には笑みさえ浮いている。


立ち止まった遠野の肩に、白い大型鳥類が止まった。



「いつもの眠り姫とは、別人だな」


「そうか?ここに来る前のミサキは、いつもあんな感じだった」

白藍が懐かしむように言った。



「ミサキは、何者なんだ?」


「そんなことを知って、遠野はどうする?」


「別に、どうというわけでもないが」



「アキとハスミから聞いたんだろ?ミサキは、死体から生まれた鬼の子だって」

< 27 / 93 >

この作品をシェア

pagetop