あけぞらのつき
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小野寺仰以の目に、最初に飛び込んできたのは、不機嫌そうに自分を見つめる、美しい少女だった。
男物のワイシャツに短パン。その足先は裸足だ。
意志の強そうな瞳は、機嫌の悪さを隠そうともせず、小野寺を睨んだ。
スクリーンの中で数を歌う少女と同じ顔立ちをしているが、その表情は別人のようだ。
「お前、死んでるのか?」
少女が尋ねた。
「え……?」
「わたしは、死んでいるのかと聞いたんだ」
戸惑う小野寺に、長身の人影が笑いかけた。
「主様。そんな尋ね方をしたら、余計怯えてしまいます」
彼が動くたびに、甘い芳香が漂った。
首の後ろで結わえた髪は、混じる色のない程に白い。
「ここは……。あなた方は一体…?僕はどうしてここに……」
小野寺の口から、疑問が溢れた。
「神森鏡偲(かみもりみさき)。これは白梔(あき)。ここはわたしのシアターだ」
「僕は……死んだのでしょうか?」
「それは、わたしが聞いている。お前のせいでわたしは、遠野なんていうイヤな奴と関わる羽目になったんだ。会ったら一言文句を付けてやろうと、ずっと思っていた」
「遠野って……。まさか、臨さんのことですか?」
「何だお前。遠野の知り合いか?」
「はい。臨さんとは小さい頃からずっと」
それで、と、ミサキは納得したように呟いた。
「臨さんが……どうかしたんですか?」
「お前のことを探していたんだ。わたしを山から引きずり出してまで。お前の母のせいにしていたが、いくら頼まれたからと、夢の中まで探そうとするなんて、イカレてる」
「僕……あの。臨さんには可愛がってもらっていたから……」
「だろうな」
ミサキは冷たい相づちを打った。
「あの……。臨さんは?」
「じきにここに来るだろうよ。定期テストがどうとか言っていたが、お前のことを気にしているようだった」
「定期テストって……。あの、今はいつなんですか?」
「は?」