あけぞらのつき
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「タカユキが、どうして……」
遠野は戸惑いを隠せず、呟いた。タカユキはスクリーンを見つめたまま、呆然と動けずにいた。
「お前、今のアイツと、知り合いか?」
冷たい声で、ミサキが尋ねた。タカユキは目を閉じて首を振った。
知り合いどころか、見たことすらない。
「接点もないのに、夢に見るワケないだろ。しかも、夢の主はお前に追われて、あんなに怯えていた。本当に知り合いではないのか」
「知らないヒトです、本当に。嘘なんてつきません」
疑うミサキに、タカユキは叫ぶように訴えた。握ったコブシが小刻みに震えていた。
「落ち着け、タカユキ」
「でも臨さん。僕は本当に」
「ミサキは、可能性の話しをしているだけだ。そうだろ?」
遠野は励ますように、タカユキの背中をさすり、ミサキを振り返った。
「だが、説明が付かない」
「主様」
アキが緊張した小声で、ミサキを呼んだ。
「主様。あるいは、呪いが動き出したのかも知れません」
「縁切り榎木か。だとしたら、律儀なやつだ。望まれたからと、自分を貶めるマネをするとは」
ミサキは鼻で笑って、アキの膝から立ち上がった。
「主様……?」
「行く」
「行く?どちらへ?」
「決まってるだろう。呪い退治だ」
孤高の眠り姫が、双眸を歪めて嗤った。