あけぞらのつき


***

「タカユキが、どうして……」


遠野は戸惑いを隠せず、呟いた。タカユキはスクリーンを見つめたまま、呆然と動けずにいた。



「お前、今のアイツと、知り合いか?」


冷たい声で、ミサキが尋ねた。タカユキは目を閉じて首を振った。

知り合いどころか、見たことすらない。



「接点もないのに、夢に見るワケないだろ。しかも、夢の主はお前に追われて、あんなに怯えていた。本当に知り合いではないのか」



「知らないヒトです、本当に。嘘なんてつきません」


疑うミサキに、タカユキは叫ぶように訴えた。握ったコブシが小刻みに震えていた。


「落ち着け、タカユキ」



「でも臨さん。僕は本当に」


「ミサキは、可能性の話しをしているだけだ。そうだろ?」



遠野は励ますように、タカユキの背中をさすり、ミサキを振り返った。



「だが、説明が付かない」


「主様」

アキが緊張した小声で、ミサキを呼んだ。


「主様。あるいは、呪いが動き出したのかも知れません」



「縁切り榎木か。だとしたら、律儀なやつだ。望まれたからと、自分を貶めるマネをするとは」


ミサキは鼻で笑って、アキの膝から立ち上がった。



「主様……?」



「行く」


「行く?どちらへ?」



「決まってるだろう。呪い退治だ」

孤高の眠り姫が、双眸を歪めて嗤った。





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