あけぞらのつき
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見上げた月は、青白く輝いていた。
あなたを失ってから、幾年月(いくとしつき)が流れただろうか。
許さない。
怒りに歪んだ相貌で、そう叫んだあなたの声が、つい先刻のように、耳のそばで聞こえた。
それでもわたくしは、あなたを想わずにいられない。
いつしか白梔は、頭を垂れて、水面(みなも)に映った自分と目があった。
幻想の中でその眼差しは、手中の珠と育てた少女になり、許さないと叫んだ、かつての主人の面影と重なった。
もう二度と、笑いかけてはくれないだろう。犯した罪が、背中に重くのし掛かった。
白梔は、冷たい水鏡に指先を浸して、その幻影を散らした。