あけぞらのつき
白梔
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県立鄙山(ひながやま)高校1年、遠野臨(とおののぞむ)。
旧家、遠野家の跡取り息子。
高校生になったばかりとは思えない、落ち着いた物腰は、さすが旧家の子息、といったところか。
容姿端麗、眉目秀麗、成績優秀、文武両道。
彼を誉め称えるための言葉は、数多く存在するが、今回は割愛させていただく。
旧家の跡取りという条件を差し引いても、彼はお釣りが来るほどの注目度を持っている。
孤高の眠り姫と評されている神森鏡偲に言わせれば、それは、発情期のメスの目という言い方になるようだ。
奪い合いが殺し合いにならないのは、さすが人間だなと、皮肉混じりの口調で笑う。
神森鏡偲(かみもりみさき)。
同じく、県立鄙山高校の一年生だ。いや、正確に言えば、半年遅れで入学した0.5年生。
遠野曰く、顔は美形だが、言葉遣いと性格に難がある。
クラスに馴染もうとはしない、ボッチの陰キャラは、顔立ちの美しさと身に纏う雰囲気だけで、孤高の眠り姫とアダナされているらしい。
遠野と違って、彼女には、家族と呼べる人間がいない。
教室の窓の外で、赤い目をしたアルビノの鷹が、一声鳴いた。
その声にミサキは、まあ良いじゃないかと、うとうとと微睡んだ。
数式の解説をする教師の声は、どこか遠くから聞こえてくるようだ。
半目に閉じた瞼の裏で、古い映写機がカタカタと回り始めた。
「ミサキ、授業中だろ。居眠りするなよ」
小さなシアターの狭いシートに、白髪の少年が座った。目は相変わらずに赤い。