あけぞらのつき


「姉君に会うことは?」



「……不可能です。今は、目を覚ますこともできません」


「そうか。つらい話しをさせてしまったな。すまない」



遠野はいいえと笑って、足元の懐中電灯を拾い上げた。


「中には電気を引いていないんです。これをお持ちください。せめて月が出ていれば、多少は窓から光が入るのですが」



外はあいにくの曇り空だ。

本当に雪でも降り出すつもりか、足元から寒さが這い上がってきた。


遠野は懐中電灯の光を頼りに、いくつかの箱を探し、ハスミに手渡した。


「部屋を用意します。こんなところに長い時間いたら、風邪を引いてしまう」


くしゅん。


遠野は、見かけによらず可愛らしいくしゃみをし、照れたように笑った。




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