あけぞらのつき


***

「何だ?」


誰かの叫び声を聞いた気がして、ハスミが振り返った。



「今……何か……」


「どうかしましたか?」



遠野臨は、片目の修験者を心配するように尋ねた。

ハスミは遠野を無視して立ち上がり、乱暴にドアを開けた。


嫌な気配がする。

廊下の真ん中で左右を見渡して、ハスミは右目の眼帯を剥がした。


遠野はその目を認めて、あっと声を上げた。



ハスミの右目は、金色に透き通る猫の目だった。

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