あけぞらのつき
長夜叉は、目尻に浮いた涙を乱暴に拭って、ミサキの手を取った。
「ミサキのおかげで、また茅花と会うことができた。感謝している。もう二度と会うことはないだろう。済まなかったな、刹那の子。オレのせいで、業を背負わせてしまった」
「だがそのおかげで、わたしはアキと出会うことができた。それだけは、わたしもお前に感謝している。悪夢に捕らわれるのは、もう嫌だ」
そうだなと笑って、長夜叉はミサキの中に消えた。
「アキ。アキは一生わたしものだ。わたしのそばで、わたしだけに忠誠を誓え。そうしたら、長夜叉を裏切ったあの罪も、贖わせてやる」
ミサキは甘えるように、アキの胸に頭を預けた。
アキは「はい」と頷いて、瞼を閉じた双眸から涙をこぼした。
「わたくしは生涯、主様のおそばに……。決して離れることは、いたしません」
「わたしは、クチナシの巫女ではなく、クチナシの主人だ」
朝日の影が、シアターに差し込んだ。
夜明けの晩には、ただ紙のように薄い月がかかっているだけだった。