死の代償
 死とは、どういうものだろうか。

 ある日、ふとそう考え、白井美雪は、自殺してみようかしらと思った。

 別に、なにが理由と言うわけではない。

 けれど、なにか漠然とした不安のようなものが、もやもやと頭の中で泡を膨ませている。

 死という言葉の先に、なにがあるのだろうか?

 そして、自殺と言うのはどうすれば良いのだろうか。

 聞いた話では、自殺するには遺書と言うものを書いて、

自分がなぜ自殺をすることにしたかと言う意思を表示しなくてはいけないらしい。

 そうすることによって、死に意味を持たせるのだそうだ。

 そうか、自殺するには理由がいるのか。

〈あたしには、何かそういうものがあるのだろうか〉

 美雪は、机の上で腕を組み、顎を乗せて考えてみた。

 受験勉強に行き詰まって……まだ高2だから早いような気がした。

 失恋して……失恋するにはまず恋をしなくちゃいけない。

 ダイエット……食べても太らないし。ちょっと自慢。

 いじめられて……経験がないから良く判らないし。気付かない内にいじめてる方があるかも。

 借金で……確か、親に2万円貸しているはず。今月は返してもらおう。

 病気で……風邪ならひいたことがある。

 そうやって、次々と思い浮かぶものを自分に当てはめてみたが、どうもしっくりとくるものがなかった。

「やーめたっ」

 そう呟いて、美雪は椅子の背に寄り掛かって思い切り伸びをした。

 ぱきぽきと背骨の鳴る音が心地好い。

 そのまま天井を見詰める。

 白い天井に蛍光灯のカバーが見える。

 死ぬってなんだろ。

 とりあえず、毎日は楽しい。

 毎日なにか新しいことが見付かるし、友達とのおしゃべり、学校の勉強、部活、バイト、メール、やることはいろいろある。

 毎日、たくさんの人と関わっている。

 死ぬと、それらの関わりが途絶えてしまうのだろうか。





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