死の代償
 やはり人が死ぬと言うのは、思っているほど迷惑をかけないのかもしれない、という考えに至った。

 そうすると、今度は、また最初の疑問が持ち上がってくる。

〈死とはなんだろう〉

 死とは生きていないことだ。

 生きていないということは、息もしていないし、おいしいものも食べられない。

 おしゃべりもできないのかな。でも、幽霊というのがあるじゃない。

 死の向こうに幽霊が待ってるのか?

 そこまで考えて美雪は、幽霊ならなってみたいな、と思った。

 ふわふわと、だれにとがめられることなく漂って暮らせるなんて、なんか気持ち良さそう。

 あれ?暮らすということは、幽霊も生きているのだろうか。

 美雪は、ゆっくり身体を起こして、コミックスやファッション雑誌、

その合間に教科書や参考書が置かれた机に向かって、何気なく思いに耽った。

 ベッドサイドの本棚に置いてあるCDコンポが、

お気に入りのポップスの軽快なビートを彼女の耳に届けている。

 幽霊が実際にいるとして、そして、死の次ぎが幽霊ならば、

死というのは生きていないと言うことではなくて、

幽霊と言う新たなる生への変化点でしかないのだろうか。

 とすると、生というのは状態の継続であって、死はその状態の変化点ということだろうか。

 なんだか難しい話になってきてしまった。

 そう思って、美雪はそれ以上考えるのを止めた。

 そんな事は、そう、実際に死んてみればすぐに判るのだ。

 ならば、どうやって死のうか。

 自分で死ぬとなれば自殺だけど、遺書をどうしようかと、ふと思った。

 が、さっきの考えからすると別に必要なさそうだなと結論した。


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