大人のあなたに届かなくて。

初めて




「波船」


ガタッ


私が椅子から立ち上がる音が教室中に響く


返事をすることができなかった。



テスト用紙が私の手元へ返される



点数は…


64点。


テストの結果はどうでもよかったけど、中学1年、2年と40点以下が平均の私にとって64点は結構いい点数だった。



「…やった!…64点だ。」


そっと呟いた










「おい、そんな点数で喜んでたらやばいぞ笑笑」




え……?





そっと後ろを振り返る




そこには、笑顔で私を見ている百本先生の姿。



「え…?今…私に喋りかけたのって、百本先生…ですか…?」



「俺以外にいると思う?」


いや、そういう意味じゃないんだけど…


「…いえ…。」



「まあ、これからだから…頑張れよ笑笑」


私の心の中がいっきに晴れ模様に変わる


「……はい!!!」



そう言って自分の席に戻った。


まだ心臓がバクバクしてる。



え…どういうこと?


先生が私に喋りかけてくれた、


え、、、え?!?!


飛び跳ねたいくらい嬉しかった


ただ、喋りかけてくれただけじゃない


初めて、私に微笑んでくれた…。



「嫌われてるんじゃなかったのかな…」



「ん?麻衣ー、お前何ボソボソ言ってんのー?」



やばいやばいやばい!すごくうれしい!!どうしよどうしよもう心がルンルンるんだ〜♪


百本先生と初めて喋れた嬉しさに浸っていた。


「おい聞いてんの?」


この調子で喋っていけるかな…


仲良くなれるかな…


次の休み時間、話しかけてもいいかな


いや、ここは調子に乗らないほうが…



頭の中はもう百本先生の事でいっぱいだ。


「おい」


よしっ決めた!!


今回話しかけてくれたのはたまたまかもしれないし、調子にのらずまだ話しかけないでおこう!


少し様子を見てみたい


「まーーーーいーーーー?」


いつか、先生とバカにし合える関係になれたらいいな



「………。」









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