大人のあなたに届かなくて。
運動会


5月下旬

体育の授業ではすでに運動会の練習にとりかかっていた。

「ねぇ麻衣!運動会の曲なんかあるー?」

学級委員の美優(みゆ)が悩んでいる顔をして私のほうを見る。

2年生女子は自分たちで曲もダンスも考えて発表する。

「んーーーー…可愛い系?かっこいい系?面白系?」

「そこはやっぱかっこいい系でしょー!!」

「だよねー?けど面白系で生徒も先生も保護者も笑わせるのもありじゃん?笑笑」

「まぁーそうなんだけどさぁ?うちら芸人じゃないんだから滑る可能性大ありじゃん笑」


「確かにねー…」

周りが静まり返ると、私の隣にいた楓が突然大声をあげた

「はーい!私、パーティーロックって音楽で踊りたい!」

「ちょっともー!楓ーー、びっくりしたじゃん」


「ごめん笑」

「その曲知ってる!!それかっこいいよね!?ねぇみんな!音楽パーティーロックにしない?」

美優がピョンピョン飛び跳ねながら言った

「いいよー!」

周りの女子達が賛成した。


「じゃあ決まりね!振り付けはある人に相談して決めてくるから、それまで待っててー!日にちかかっちゃうけど(汗)」

よっしゃあ!振り付け考えなくてもいいんじゃん!!いぇーい!

「えほんと?うちら考えなくていいの??」

楓がはてなマークでいっぱいの顔をしながら質問した

「もちろん!待っててね!スペシャリストに頼んでくるから笑笑」

スペシャリスト…?

「ねぇ、そのスペシャリストって誰?」


「おーっと!麻衣さんからご質問がありましたがスペシャリストの正体は振り付け発表の時に教えまーす!」

「えー!気になるんだけど笑」

「楽しみにしててね笑」

「うん笑」

スペシャリストって誰なんだろー。

まさかの芸能人?!


えーーー!もう楽しみで楽しみでしたかない!!


振り付け発表早く来い!!

「麻衣ー、次国語で図書室でしょ?移動しよー」

「え、次国語なの?」

「そーだよ図書室」

「え、移動?面倒くさーー!」

「そんなこと言っちゃダメじゃん笑百本先生が悲しむぞ☆」

私はなんでも思ったことをすぐ口に出してしまう。

考え事とかは口に出さないけど、「面倒くさい」、「美味しい」、「かわいい」、「すごい」とか、感情系はすぐ口に出してしまう。

今はそんな気にしてないけど、大人になったら気にするのかなぁ

いやだ。大人になんかなりたくない!!

ずーっと子供のままでいいのに

「ピーターパン飛んできてくれえ~」

「ピーターパン??なんで?」

後から聞き覚えのある声が聞こえた

「え?あ!百本先生!」

「なんで??」

「なんでって…、大人って大変そうだし大人になりたくないなーって」

「大人ねぇー、大人は大変だけど楽しいぞ。」

「例えば?」

百本先生は少し悩んだ

「自分で稼いだお金だから自由に使えるし、友達の家に泊まりに行くのも親の許可なんかいらない、ご飯も自由、寝るのも、起きるのも」

「そんなの我慢できるよだから子供のままがいい」

「そうか?俺は波船に早く大人になって欲しいけどな」

「生徒の成長が先生の楽しみってか!そんなの私には関係ないもん。大人にはなりたくない。」

「そのうち分かる」

そのうちっていつ…?

大人になる前にはわかるかな。

「麻衣!授業遅れる!」

楓が私の教科書と筆箱を持って駆け寄ってきた。

「あ!ごめん!!教科書と筆箱ありがとう!ダッシュで行こうー!」

「全力ダーーーッシュ!」

私と楓が全力で図書室へ走る。

「廊下は走るな不良ー!」

百本先生が叫んだけど私たちには聞こえなかった









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