2番目に君を、愛してる。

手を離した新藤さんは吉沢さんと向かい合う。

「気を付けて帰ってね」


全開にした窓ガラスから、彼が玄関のドアを開けたのが見えた。


「あなたも2番目なのね…」


残された吉沢さんの呟きが耳に届く。
壁となっていた新藤さんがいなくなり、お互いに会釈をする。


「これ、あたしの連絡先。なんでも連絡して」

ライトグリーンのラメの入ったネイルを施した綺麗な手で、名刺を差し出された。

手作りのようで吉沢さんの似顔絵と、連絡先が記載されていた。


「ありがとうございます。もう用は大丈夫ですか?」


「ええ。おやすみなさい」


もしかして邪魔してしまっただろうか。


「こんな夜中にひとりで大丈夫ですか?タクシー呼びますか?それまで中で待っていただいて…」



「優しいのね。でも下に自分の車を停めてるから、大丈夫よ。また会いましょう」


「はい、おやすみなさい」


「あ、あの子犬ちゃん、元気にしてるわよ」

子犬…。

吉沢さんはコツコツと高いヒールの音を響かせ、それでも俊敏な動作で階段を下りていった。

最後まで見送り、しっかり窓の鍵を閉める。


居間に戻ることが、なんだか気まずい。

< 155 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop