2番目に君を、愛してる。
手を離した新藤さんは吉沢さんと向かい合う。
「気を付けて帰ってね」
全開にした窓ガラスから、彼が玄関のドアを開けたのが見えた。
「あなたも2番目なのね…」
残された吉沢さんの呟きが耳に届く。
壁となっていた新藤さんがいなくなり、お互いに会釈をする。
「これ、あたしの連絡先。なんでも連絡して」
ライトグリーンのラメの入ったネイルを施した綺麗な手で、名刺を差し出された。
手作りのようで吉沢さんの似顔絵と、連絡先が記載されていた。
「ありがとうございます。もう用は大丈夫ですか?」
「ええ。おやすみなさい」
もしかして邪魔してしまっただろうか。
「こんな夜中にひとりで大丈夫ですか?タクシー呼びますか?それまで中で待っていただいて…」
「優しいのね。でも下に自分の車を停めてるから、大丈夫よ。また会いましょう」
「はい、おやすみなさい」
「あ、あの子犬ちゃん、元気にしてるわよ」
子犬…。
吉沢さんはコツコツと高いヒールの音を響かせ、それでも俊敏な動作で階段を下りていった。
最後まで見送り、しっかり窓の鍵を閉める。
居間に戻ることが、なんだか気まずい。