2番目に君を、愛してる。
2回目の水族館。
人の多い水族館で迷子にならないよう、ずっと兄が手を引いてくれていた。
水槽の前でほんの一瞬、口付けをしたカップルを見て、同じようにして欲しいとせがみ困ったように兄は私に同じようにしてくれた。まぁ唇ではなくて額だったけど。私はそれで満足だった。
チケットを買うために窓口に並ぶ新藤さんを待ちながら思い出す。
ああ、あの時、チケットを買ってくれた両親はお揃いのTシャツを着てたっけ。私たち家族は本当に仲が良かった。
「入ろうか」
「ありがとうございます」
お財布を出そうか少し迷ったが、素直にチケットを受け取る。
此処に遊びに来た正確な日は思い出せないが、もう10年くらい前のことだ。
楽しい思い出が詰まったこの場所に、もう一度来たいと思っていた。
兄に相談しても思い出巡りなどくだらないと一蹴されたが、優しい兄は両親と来た場所に訪れる勇気がないように見えた。
実際に今、私は少し泣きそうだ。
「なっちゃん?」
ぼっとしていた私に新藤さんが少し離れた場所から声をかけた。
「なっちゃん!」
珍しく慌てた様子の新藤さんを見て、何かあったのかな。って人ごとのように思っていた。