2番目に君を、愛してる。
助手席に座る新藤さんをミラー越しに確認すると、目を閉じている。
傷口が痛むのだろうか。
せっかく腕の傷が治ったところで、今度は足を傷付けた。
後悔してももう遅い。
ギュッと唇を噛み締める。
「私を逮捕してください」
「君を逮捕することになると、こいつも詐欺罪で逮捕だな」
新藤さんの代わりにハンドルを握る美崎さんが即答した。
詐欺罪。
結婚詐欺やおれおれ詐欺なんかをよく耳にするけれど、私も、同じように甘い蜜に誘われてしまったのだろうか。
「君たちは3人で、一度きちんと話す必要があると思うよ。まぁ、俺から弁解しておくと、新藤は今夜全てを君に話す予定だったよ。そして君の家から出て行くことも考えてた」
「美崎、もういい」
やはり目を閉じたまま、新藤さんは言った。
「新藤さん、話を聞きたいです。今夜、私に話す予定であったことを教えてください。私も、新藤さんに今夜、兄の失踪のことを話すつもりでした」
他人に弱みを握られたくないあまり、祖父にさえ兄の失踪のことは言わなかった。ひとりで抱えてきた。
重い荷物を少し下ろすことを許可されるなら、打ち明ける人は新藤さんが良いと思った。
居場所が分からず不安に包まれ、毎日夜遅くまで兄を探しに歩いた日々。
あの台風の日だって、兄のマンションの周りを探しに行こうと思っていたところだった。
包み隠さず、話したかった。
包み隠すことなく、知りたかった。
こんなかたちで終わってしまうのだろうか。