2番目に君を、愛してる。
震える兄の手を握る。
しばらくして松葉杖をついた新藤さんが診察室から出てきた。
私たちは座ったまま新藤さんを見つめる。
「なっちゃん安心して、大したことないって!」
雰囲気の悪い私たちに敢えていつも通り明るく言い寄ってきた美崎さんの言葉に、とりあえず安心した。
「治療費払います…今は持ち合わせがないので、明日にでも」
目を充血させた兄を見る。
「自業自得なのでお気になさらず」
「…だけど、」
「急に飛びかかったこちらに非がありますので」
新藤さんは私を見ることなく、兄に言った。
「…もう一度、真相を聞かせてください」
「警察で話したことと何も変わりありません。気が動転して飛び降りた櫻井を助けようとしてあなたの兄は犠牲になりました」
新藤さんは表情こそ変わらなかったが、松葉杖を握るその手に力がこもっている。
落ち着いて話しているように見えても悔しさややるせなさが滲み出ていた。
「…彼女は、死を選ぶような女性ではないのです」
新藤さんの小さな呟きに
兄は首を横に振る。
「それでも真実です。警察の捜査でも同じ答えが出ているはずです。疑いたい気持ちは分かりますが、俺もあんたも受け入れなければならない」
傷付いた新藤さんを前に、さらに力を入れて兄の手を握る。
いくら私が優しい言葉や慰めの言葉を吐いたとしても、新藤さんには何も響かないだろうから、できることは何もない。
一日でも早く、彼に笑って欲しいけれどーーきっとこれからも新藤さんは1番目の彼女を想って、心の中で泣き続けるのだろう。