2番目に君を、愛してる。
耳に届いた声は、
「勉強進んでる?」
倫也くんの気だるげなそれではなく、柔らかなトーンの耳馴染みの良い声だった。
「新藤さん……」
目の前の席に腰を下ろした新藤さんは広げた参考書を覗き込む。
「なんで…気付いてたんですか?」
「職業柄、人の視線には敏感なんだ」
いつかも同じようなことを言っていた。
「話しかけちゃダメかなって思って…」
「なんで?」
「なんでって、他人のフリをすべきかなと思って」
「話しかけたくないならそうして欲しいけど、嫌でなければ声くらい掛けてよ。君は俺に対して何ひとつ後ろめたいことはしていないでしょう」
首を傾げながら、そうだよね?と新藤さんは微笑んだ。うっとりしてしまう程の優しい笑み。
「…そんな他人行儀な笑い方、やめてください」
違う。
違うよ、新藤さん。
半年の共同生活の中で見てきた新藤さんの笑顔は人形のように整ったものでも、雑誌でモデルが大衆に向けて発信する美しい微笑みでもなくて、
温かい目をして顔を綻ばせたり、時折、白い歯を見せて心の底から笑い掛けてくれた。
こんな上品で綺麗な作り笑いはいらない。