2番目に君を、愛してる。
「マスターが東都大学出身なんだ」
お会計の際に倫也くんが紹介してくれた。
「倫也くんのガールフレンドかな?」
白髪頭のマスターはYシャツを着てネクタイを結び、凛とした雰囲気をまとっている。
「違う違う、俺の後輩になる予定の子」
「初めまして。波木夏です」
"俺の後輩になる予定の子"
さらりとそう紹介してくれた彼のさりげない優しさを感じた。
「オムライスとても美味しかったです」
「ありがとう。またおいで」
マスターと挨拶を交わしている間に倫也くんがお財布を出そうとしていたため、慌ててそれを制する。
「参考書のお礼に私が!」
「別にいいよ」
「よくないよ!」
倫也くんの手から伝票が挟まったクリップボードをとろうと伸ばした手は、空を掴むことになった。
私より先にマスターがクリップボードを取り上げたためだ。
「お代は貰ってるんだ」
首を傾げる倫也くんの横で私はマスターのその一言だけで、察した。
いつだって、あなたはそうだった。
私には一銭も支払わせてくれなかった。