2番目に君を、愛してる。
図書室に足を踏み入れるとすぐに倫也くんの姿を見つけた。
彼は本を机に広げてはいるが、その目は閉じられていて器用に壁に寄りかかりながら眠ってしまっていた。
耳にはイヤホンがついていて、近付くと僅かな音漏れが聞こえた。
4人掛けのテーブルをひとり占領している倫也くんの向かいの席にバッグを置く。
アルバイト先の図書館も立派ではあるが、ここもなかなかの書籍数だ。受験生という自覚はあるものの自然と、料理本のコーナーに立ち寄っていた。
いつか新藤さんと同じ食卓を囲みたいと願う反面、実現しない確率がより高いことも感じている。それでも"いつか"のために、料理の腕を上げておくことも悪くない。
「お弁当特集…」
キャラ弁からヘルシー弁当まで幅広いお弁当が紹介された雑誌を手に取る。
コンセプトは"飽きないお弁当"のようで、分厚くバラエティーに富んだ雑誌だ。
ふと思い浮かんだ。
お弁当を作って、警視庁に届けることはルール違反だろうか。
雑誌をペラペラとめくりながら新藤さんに渡す光景を想像する。
受け取ってくれないかもしれないし、絶対に迷惑だろう。
「弁当?」
「あ、うん。起きたんだ」
私の背後で雑誌を覗き込むようにして倫也くんは首を伸ばした。
倫也くんの顔が迫り、距離が近付く。
制汗スプレーのミントの匂いがした。
「誰かに弁当作るの?」
目をこすりながら質問される。
「受け取ってもらえないかもしれないけど…渡したいなって」
「彼氏?」
「ううん、違うよ!」
慌てて本棚に雑誌を戻す。
そうだよね、お弁当を渡すなんて恋人のすることだよね。
「借りれば?」
お財布から図書カードを取り出して手渡しされた。
「いいの?」
「読み終わったら俺に返してくれればいいから」
「ありがとう!」
倫也くんに後押ししてもらい、少しだけ勇気を出してみようと思った。
なにもしないよりは、ずっといい。