2番目に君を、愛してる。
11月に入ると無事に兄の再就職先も見つかり、ようやく一息つけた。
ベランダでちびちびとビールを飲む兄に茹でたとうもろこしを差し出す。
「お、サンキュ」
「これから唐揚げも作るから。食べて行って」
朝の走り込みを始めたという兄は元通りの体型を取り戻した。いやそれ以上だろう。普通の神経をしていたら兄に喧嘩を売る人はいない程にTシャツの上からも筋肉の存在が主張されている。
「…この間、新藤さんが謝罪に来たよ」
「え、いつ、どこで!」
「美崎さんと飯行ったんだけど、その時に新藤さんも来てさ。座敷に頭がつくほど深々と謝られた」
「もうお兄ちゃんの疑いも晴れたってこと?」
「だろうな」
「良かった…」
新藤さんも一息つけているといいな。
「おまえ、新藤さんに惚れてたの?」
「なんで?」
兄妹で恋愛の話はしたことがなかった。
数えきれないほどに兄が好きだと口酸っぱく主張しても取り合ってもらえず、悲しい思いをしてきた。
けれどこれからは兄が好きだと伝えることはないだろう。
少し前から兄は、2番目に好きな存在へと変わったのだから。