2番目に君を、愛してる。

うちの兄はとことん妹に甘い。

昨夜は夜遅くまで開いているデパートを探し、花柄のワンピースとメイクセットを買ってくれた。

私が就職をしたわけでもないのに、就職祝いだと言って。



翌朝は早起きをしてまだ眠っている兄の分のお昼ご飯も準備して、家を出た。



そして警視庁前に私は立っている。


お弁当の入った紙袋を握りしめて、見よう見まねで化粧をし、私には不釣り合いな可愛らしいワンピースも勇気を出して着てみた。


「新藤冬樹さんお願いします」


受付に座る美人な女性に声を掛ける。


「どこの課の新藤でしょうか」


「課…?」


「お約束でしょうか」


「いえ…」


「失礼ですがどのようなご用件でしょうか」


お弁当を届けに来ましたなんて言えない。
新藤さんは仕事中なのに。


「やっぱり良いです、すみません」


仕事の邪魔はしたくない。
新藤さんと倫也くんの行きつけのあのカフェで待っていたら会えるかもしれない。


「あれ?あなた?」


ちょうど通りすがった女性に声を掛けられる。
高いヒールにスーツ姿の彼女はまさにできる女性という風貌で、どうしても苦手意識をもってしまう。


「冬樹に会いに来たの?」


吉沢さん。新藤さんの元恋人。


「運が良いわね、ちょうど外から帰って来たところよ。来なさい…この子、知り合いだから」

受付から来客用と書かれたカードホルダーを手渡される。


「吉沢さん…」

「私も忙しいから、早く」

「いいんですか?」


靴音を響かせて速足で歩く吉沢さんに続いてエレベーターに乗り込んだ。

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