2番目に君を、愛してる。
エレベーターは10階に止まった。
「冬樹、いい男よね」
「…はい」
「あなたのような子供には釣り合わないと思わない?」
「…はい」
廊下を歩きながら辛辣な言葉を受け、唇を噛む。
分かってる。知ってる。
言われなくても、私を含めた全員がそう思っていることは知っている。
「…って言う人がいるかもしれないけど、そんな外野の話に耳を傾ける必要はないわよ。こんな美人の私と付き合っている時も、同じようなことを言う人間はたくさんいたわ。冬樹と付き合う女はみんな馬鹿にされるの」
「吉沢さん…」
「なにかあったら、私に相談しなさい。そのメイクもあなたには似合ってないわ」
「どうして?私によくしてくれるんですか?」
「櫻井ーー冬樹の初恋を、あなたなら忘れさせてあげられる気がするの」
櫻井さん。
新藤さんの1番目に好きな人。
「ここよ。冬樹は…」
吉沢さんが机に座る新藤さんを指差す。
広いオフィスにいくつものデスクが並んでいたが、ほとんどの人が席を外しているようでパソコンの画面は真っ暗だった。
新藤さんはパソコンのキーボードを叩き、その横に美崎さんが立っていた。
「あ、新藤、ストップ」
「ああ、これか…」
当然ながら2人は仕事中で、その眼差しは真剣だった。国のために働いている新藤さんと、ただの女子高生。背負っているものが違うんだ。
「吉沢さん、やっぱりいいです」
小声で吉沢さんに伝え、彼女の細い腕をとる。
「またの機会にします」