2番目に君を、愛してる。

フリーズする私の隣りに新藤さんが座り、縮まった距離に胸が騒ぐ。


「…私に手を出したら、刑事としてメンツが立たないからですか?」


水を口に含み、一息ついてから聞いた。
お互いに何も話せぬまま遠ざかる距離を嘆くくらいなら、傷付いてもいいから真実を聞きたい。
彼に出逢って私は少し強くなった気がする。


「刑事でなく、男としてかな。君との未来を考える上で、責任ある大人としての行動をとるべきだと思う。君が許そうと、世間一般が認めないことをすべきではないよ。俺たちには未来があるんだから、そう急ぐこともないしね」


「新藤さん…」


「俺は君に全てを話すつもりで部屋に連れてきた。話を全て聞き終えて、君の気持ちが変わらないというのなら、2人で未来のことを、明日からのことを考えよう」


「話してくれるんですか」


「本当はあの花火の夜、話そうと思っていた。話して君のお兄さんの代わりに君を守っていけたらとそう思っていたけれど…お兄さんが戻ってきて俺はお役御免だと思ったから、なっちゃんから離れたんだ」


"なっちゃん"ーーいつの間にか名前呼びに戻っていることに、ホッとした。
新藤さんに名前を呼ばれる度に、自分の存在価値が見出せるような錯覚に陥りーー例えどんな話を聞かされようとも、鉛のように、この心は動かないだろう。

新藤冬樹の傍にいたいと願う心は堅くなに、離れることを拒むだろう。


「聞かせてください、嘘のないあなたの話を」


お弁当を届けたあの日に、覚悟を決めたのだから。

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