お見合いから始まる恋→結婚
私の叫び声は尚登に届かなかったようだ。

否、今の尚登には何も耳に入らなかったんだろう。

「すまない、俺が悪いのは分かっているから…。」

私に背を向ける尚登。

何度私は尚登の名を呼んだんだろう。

尚登の背中はそのまま見えなくなってしまった。

私は声も涙も枯れてしまうまで、その場にたたずんでいた。

「大丈夫かい?」

まだお兄さんもいたようだ。

しかし私にはそんな事は関係ない。

私はふらっと立ち上がると、そのまま歩き出した。

「陶子さん。」

お兄さんが後からついてくる。

しかしそんな事は私の眼中になかった。

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