お見合いから始まる恋→結婚
尚登さんは一瞬視線を宙に浮かすと、私に視線を戻してゆっくりと微笑んだ。

「陶子、好きだよ。私と…。」

今度は私が尚登さんに抱き着く番だった。

「女はいくつになっても、その最初の言葉が欲しいんです。」

尚登さんの手が私の背中に回る。

「関係が穏やかに進み過ぎて…、私からちゃんと言った方が良いのかなとか…、でも…。」

「もういいよ。そんなこと…。」

「でも…。」

そう言った瞬間に、尚登さんに私の唇は塞がれていた。

私はゆっくりと目をつぶった。

久々のキスにとても温かいものを感じながら。

「あんなに悩んだのが馬鹿らしくなって来たよ。」

落ち着きを取り戻した尚登さんが苦笑いをする。


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