お見合いから始まる恋→結婚
尚登の何とも言えない厳しい表情が私の胸を打つ。

「どうしても許せなかった。だから一切の連絡を絶ったよ。地獄のような日々だった。」

「尚登…。」

私はそれ以上の言葉が出ない。

「それを…。俺自身が辛い思いを嫌というほど味わったから、陶子にもその事を思い出してもらいたくなかったし、俺も話したくなかった。」

尚登が優しく私の頭を撫でる。

「でも陶子はちゃんと俺に話してくれただろう。俺もいつか陶子にちゃんと話さなくてはいけないと思っていた。ちょっと時間がかかってしまった事は済まなかったと思っている…。」

私は身体を乗り出して、尚登に深い深いキスをした。

もうこれ以上話さなくてもいいよと言っているかのように。

尚登とは違う方法だけれど。

「私達は傷を負っている分、お互いを思いやれるようになったのよ。だから、尚登に出会うのにこの歳まで待たなくてはいけなかったのかもしれないわ。」

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