お見合いから始まる恋→結婚
「陶子さんが居る時の方が良いと思って。」

お兄さんの表情と対照的に、尚登の顔から血の気が引いたような気がした。

もしかして…。

尚登はひざの上でこぶしを握り、それを見つめながら身体は少し震えているようだ。

その顔は怒りを少し含んでいるようにも見える。

「…こないだ話しただろう。以前の婚約者だった人…。」

私は驚きで顔を両手で覆った。

この人…、お兄さんは何を考えているんだろう。

こんな場所にそんな人を連れてくるなんて。

そして尚登の前に璃子さんが、私の前にはお兄さんが座る。

その位置取りからしておかしい。

私はそっと尚登の手の上に自分の手を置いた。

尚登は我に返ったように、私を見た。

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