大江戸ロミオ&ジュリエット

……なぜ、ここに「あの方」が。何のために。

志鶴は理由(わけ)がわからなかった。


「志鶴、どうした」

多聞が、ぼんやりしてぴくりとも動かない志鶴を見て怪訝な顔になる。

「も…申し訳ありませぬ」

志鶴は弾かれたように、多聞の身支度に取りかかる。

町奉行所に参る前に、湯屋(ゆうや)へ出かけるのが与力の日課なので、寝間着から着流しに着替えるのだ。

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