大江戸ロミオ&ジュリエット
「……では、若旦那、あっしはこれで」
髪結いが多聞に声をかけた。
「おう、本日は急に悪かったな」
多聞が髪結いをねぎらった。
「いえ……そいじゃぁ、明日はいつものヤツが来やすんで」
おせいが縁側で茶を供す。
髪結いが、おせいからもらった茶をくっと一飲みすると「ありがとよ」とニヤッと笑って湯呑みを返す。のっぺりした顔のおせいの頬が、たちまち朱に染まった。
最後に、髪結いが志鶴を見た。