大江戸ロミオ&ジュリエット

「……御新造(ごしんぞ)さん、失礼しやす」

志鶴と目を合わせたまま「あの方」が一礼した。
心に染み込むような響きの低い声だった。

「ご苦労さま」

志鶴は、今度ははっきりとわかる笑顔を見せた。

……あれから、すっかり痩せ細ってしまったわたくしを見て、如何(いか)に思われたか。

それよりも。

(まげ)を結い、眉を落としてお歯黒をつけ「人妻」になった姿を見て。


……あの方は、如何に、思われたのであろう。

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