大江戸ロミオ&ジュリエット
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多聞の身支度を整えるために参ったというのに。

思いもかけず「あの方」が髪結いとして来ていたことで、志鶴の心の臓はすっかり落ち着きを失くしていた。

それに、そもそも。

寝間着を脱いだ多聞の身体(からだ)を、志鶴は恥ずかしくてまともに見ることができなかった。

手の(かす)かな震えが止まらない。

結局は、今までどおり多聞がほとんど一人で支度したようなものだ。


「……やっぱり、おめぇをちゃんと抱いて、
おれのもんにしとかねぇと気が気じゃねぇな」

多聞が機嫌を損ねた声で、ぽつり、とごちたのにも、志鶴は気がついていなかった。


それでもなんとか多聞を、
「旦那さま、ご無事で行ってらっしゃいませ」
湯屋(ゆうや)へ送り出したあと、志鶴が自室に戻ると。

朝から食すには考えられないほどのお(さい)が並べられていた。

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