大江戸ロミオ&ジュリエット
「な…なんだってっ。そっ…そりゃ、本当かっ」
源兵衛がさぁーっと青ざめ、慌てふためいた。
「あのう……舅上様……玄丞先生は、さようなことまでは……」
志鶴が、我が身は大儀ないことを云うて安心させようとすると。
「……それ以上云うと、この場で無理矢理おめぇを抱きかかえて連れ出しちまうが……いいのか」
多聞が志鶴の耳元でささやいた。
昨日、いきなり多聞に抱き上げられて新しい自室まで連れて行かれたことが頭をかすめた。
舅の前でさようなはしたなきことをされて、恥ずかしさに耐えられる志鶴ではない。
……志鶴は、我が夫が「策士」であることを思い知った。