大江戸ロミオ&ジュリエット
すぐさま志鶴は、何者かにぐいっ、と引き寄せられた。
思わず、前へつんのめりそうになる。
咄嗟に、がしっとしただれかの腕によって支えられた。
なにがなんだか訳がわからず、志鶴は腕の主を見上げる。
御納戸色の着流しの上に裾を捲って角帯に手挟んだ紋付の黒羽織、裏白の紺足袋に雪駄履き。
腰には二本、水平に差された大小の刀。
左右の鬢は町家の者のように膨らませにすっきりと持ち上げられ、細い髷は高く結われた本多髷。
そして、なにより。
切れ長の目に、スッと鼻筋が通っていて、ちょっと薄めの唇。