大江戸ロミオ&ジュリエット

「えええぇーっ」

一人知らなかったおなごが、素っ頓狂な声を上げた。

「ば、馬鹿っ……声がでけぇんだよっ」
「な、なんて声出してんのさっ、静かにおしっ」

あとの二人が(あわ)てて制する。

「だってさぁ、うちの若旦那は、どこのどいつがどう見たって『北町小町』の御新造さんに、ぞっこん『ほ』の字じゃないか」

一人知らずにいたおなごが、信じられない、という声で云う。

「そりゃぁ、そうなんだけどさ。
……でも、若旦那の姿を何人も見たってんだよ」

噂話を教えたおなごが云う。

「この江戸で、うちの若旦那を見間違えるヤツぁ、いねぇからねぇ」

同じ噂を聞いたおなごも相槌を打つ。


「……おめぇら、なにをくっちゃべってんだべ」

おせいの声だ。
どうやら門番をする中間に(ねぎら)いの茶を出しに行って、戻ってきたところらしい。
戸口から入ってきた。

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